令和5年度文化庁予算
令和5年度の予算は令和4年度の第二次補正予算の決定後、12月2日に閣議決定され、その後2月28日に衆議院を通過、年度内の成立が確実になった。文化庁予算は前年度予算1,076億円と比べて僅か0.1%増の1,077億円となった。一方コロナ対策としての令和4年度補正予算には713億円が決定している。補正予算の規模が大きく、舞台芸術活動の現場はある意味において活発になっているが、本予算がここのところ前年度プラス1億円程度の増加にとどまっていることは、来年度以降補正予算に期待できないものと考えると、令和6年度以降の活動には大きな不安がある。令和5年度通常予算でオーケストラの活動に関係のある主な内容を見ると以下の通り。
令和5年度より、これまで「舞台芸術創造活性化事業」、「文化芸術による子供育成推進事業」、「国際交流芸術支援事業」、加えて今年度からの「キャラバン事業」などいくつかの分野に分散していたものが、今年度より「舞台芸術等総合支援事業」として一つにまとめられている。関連性も大きい事業がまとまることは全体を見渡す意味、または予算の流動性などから有益であるとは思われるが、逆に分野ごとの予算の決定・公表が遅れる傾向にあり、具体的な金額での昨年との比較は難しい。
1.「我が国を代表する芸術団体等の支援」
文化庁の説明によれば前年度並みと変化はないとのこと。しかしながら複数年支援の団体数が74団体から70団体程度に減少していること、公演事業支援の内容が明確でないこと、国からのもう一つの大きな支援である「芸術文化振興基金」からの助成が年々減額され、本年度から併願が出来ないため、本予算への希望が増えることなどを考えると楽観はできない状況にある。
この予算は我が国芸術団体の水準の向上と、より多くの国民に対する優れた舞台芸術機会の提供を図るためのものとして、オーケストラの定期演奏会を中心とする、芸術的価値の高い演奏会に助成しているもの。芸術団体であるオーケストラにとっては極めて意味のある重要な予算であることは変わらない。具体的な数字の変化には注視していきたい。実演団体ではないがこれまでは「劇場・音楽堂等機能強化推進事業」の中にあった、「劇場・音楽堂等機能強化総合支援事業」も本予算の中に含まれており、対象となる劇場の支援件数などが減少している事など、具体的な支援内容の発表までは予断を許さない状況にある。
2.「学校巡回公演」
従来の「文化芸術による子供育成推進事業」はその形は残しているが、その中に含まれていた「巡回公演」部分のみが「舞台芸術等総合支援事業」に移行している。前年度予算は “ 巡回公演事業 ”として1,950校とされていたものが1,870校に減少している。文化施設等活用事業などを増やし、芸術を鑑賞・体験する子供たちの数は増やしてい
こうとのこと。
3. 「国際交流芸術支援事業」
(「舞台芸術等総合支援事業」に含まれる)
プロフェッショナルな芸術団体が行う,海外公演,そのほか海外からの招聘を伴うフェスティバルなどを対象としたもの。この3年間新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、利用が少なかったものと考えられ、予算の減少が見込まれる。
4.「全国キャラバン事業」
(「舞台芸術等総合支援事業」に含まれる)
コロナ禍における2年間、補正予算として、芸術文化の鑑賞機会を失った国民にその機会を作り、また出演機会を失った芸術団体の水準を維持するために取り上げてこられた「アートキャラバン事業」がその効果が認められ、本予算においても計上されることとなった。概算要求時には1,850百万円規模の要求となっていたが、本予算では大きく削減されることとなった。
5 「障害者による文化芸術活動推進事業」
今年度に比べて約20百万円の増額。共生社会の実現のために障害者による文化芸術活動を支援するもの。劇団、障害者施設、場関係の団体が中心にこの助成を活用している。令和4年度は「日本オーケストラ連盟」加盟団体の実績はなかった。
「戦略的芸術文化創造推進事業」は令和4年度をもって終了となった。