プロフェッショナルオーケストラのもう一つの顔
2023 年9 月に連盟に加盟する40 の団体に向けてアンケートを行いました。
「世界に向けた発信」「幅広い市場で活動できる個性的な取り組み」「地域間の格差を埋めるようなオーケストラの普及活動」「人材育成」の4 つの項目について、各楽団より特色ある活動が多数報告されたのですが、初めて聞いた活動も少なくありませんでした。
そこで、個性的な活動にも拘らず普段なかなか取り上げる機会が少ない地道な活動をオケ連ニュースでお知らせする必要性を感じ、今回は「幅広い市場で活動できる個性的な取り組み」として挙げられた中
から、地域に根差した活動事例をいくつかご紹介いたします。
【札幌交響楽団】
北海道日本ハムファイターズやコンサドーレ札幌とのコラボ企画として、ファンファーレや君が代演奏、試合後演奏の他、ファンフェスティバルや新入団選手記者発表、優勝パレードファンファーレ、2023 年度は日ハム新球場で開幕演奏などを行っています。また、演劇団体とのコラボ企画では、北海道のアーティストたちがタッグを組み、ジャンルを超えて音楽の力と、ライブの魅力を届けています。舞台美術はペングアート(発達障がい児のアート活動を支援)が担っています。
▼エスコンフィールドでの弦楽演奏、君が代演奏(札幌交響楽団)
【仙台フィルハーモニー管弦楽団】
東日本大震災被災者への音楽による復興活動を各地域で継続しています。2002年から継続開催している0歳児からのコンサート「オーケストラと遊んじゃおう」や「仙台クラシックフェスティバル」、3年に1度開催される「仙台国際音楽コンクール」など地域に根差した活動を展開しており、地元JR 仙台駅では各ホームで仙台フィルの演奏による発車音を提供しています。
▼「オーケストラと遊んじゃおう」コンサートと楽器体験(仙台フィルハーモニー管弦楽団)
【読売日本交響楽団】
楽団が所有している約2万点からなる音楽資料「南葵音楽文庫」を、同文庫創設者の紀州徳川家発祥の地である和歌山県へ寄託し、同県立図書館と博物館で一般公開し、研究者以外にも音楽に興味を持つ学生や一般市民向けに貴重な資料に接する機会を提供しています。同文庫に関する国内外からの問い合わせへの対応や、音楽資料の研究と成果の発表による音楽文化の向上のほか、市民向け講座を通じて地域の音楽普及に資する活動を行っています。また、資料寄託を記念して、隔年で和歌山市内において公演を開催し、和歌山県との交流を積極的に行っています。
▼貴重な音楽資料を公開している南葵文庫閲覧室(読売日本交響楽団)
今回は3楽団の活動をご紹介いたしました。各地のオーケストラはオリジナリティ溢れる活動を積極的に展開しています。これからも継続してご紹介していきます。ご期待ください。
2024年3月29日発行
「日本オーケストラ連盟ニュース vol.113 40 ORCHESTRAS」より