またぞう(三又治彦) ヴァイオリン
弓や指を使って音を出すヴァイオリンという楽器を担当しているお兄さん。ヴァイオリンは弦楽器の中で、一番高い音を出すんだ。みんなが歌いたくなるようなメロディを弾いているよ。
お家にあったヴァイオリンが、盾と剣に見えて、かっこいいなと思ったのがきっかけで、3歳の時にヴァイオリンを始めたんだって。
宮城県出身。桐朋学園音楽部演奏学科卒業。2006年よりNHK交響楽団ヴァイオリン奏者。仲間と共に立ち上げたNPO法人ハマのJACKの理事長を務め、ファミリー向けの演奏会やワークショップを行うなど、多くの人が楽しめる音楽プロジェクトを多数企画している。
曲目解説
高坂はる香(音楽ライター)
数世紀にわたるクラシック音楽史のなかでも、特別な存在感を放つベートーヴェン。交響曲やソナタなどの古典的な楽曲の作風、さらには音楽家の生き方そのものにも革新をもたらし、後世に大きな影響を与えました。その革新的精神はもちろん、オーケストラ音楽の発展にも功績を残しています。その成果を見てとれる最たる分野が、9つの交響曲。1作ごとに前作を超える試みを行い、ホルンやトロンボーンなどの管楽器を積極的に取り入れたり、チェロやコントラバスといった低弦を活躍させたりと、当時はなかった方法で楽器の特性を際立たせました。一連の作品は交響曲の金字塔として、今も愛され続けています。
2020年はそんな楽聖の生誕250周年。ベートーヴェンで幕をあけるプログラムで、オーケストラ音楽の魅力を存分に味わいましょう。
ベートーヴェン
交響曲第7番 イ長調 Op.92
ドイツ、古典派の作曲家、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770〜1827)。彼が最初の交響曲を作曲したのは1800年、20代後半から兆候のあった難聴が悪化しはじめた頃のことです。一時は絶望したベートーヴェンですが、強い精神力で苦難を乗り越え、56年の生涯で多くの傑作を生みました。交響曲第7番は、1811年、40代を迎えた頃に着手されました。全楽章で特徴的なリズムが用いられ、ワーグナーが“舞踏の聖化"と評したことも知られています。
第1楽章ポコ・ソステヌート–ヴィヴァーチェ。輝かしい序奏に続き、軽快な第1主題が現れ、その特徴的なリズムが一貫して用いられます。第2楽章アレグレットでは深刻な主題が変奏され、第3楽章プレストでは、活気ある音楽が戻ります。第4楽章アレグロ・コン・ブリオは、リズミカルな音楽が疾走し、熱狂的なフィナーレを迎えます。
チャイコフスキー
『眠りの森の美女』より
ワルツ
「眠りの森の美女」は、ロシアの作曲家、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840〜1893)の三大バレエのひとつで、「白鳥の湖」に続く2作目。サンクトペテルブルグの帝室劇場(現マリインスキー劇場)総裁の依頼により、フランスの詩人、シャルル・ペローのおとぎ話に基づいて、1889年に書かれました。物語は、邪悪な妖精の呪いで眠りについたオーロラ姫が、100年後、王子の口づけで目覚め、二人は結ばれるというもの。名旋律があふれる楽曲の中でも特に親しまれている「ワルツ」は、オーロラ姫の16歳の誕生日の宴で、人々が花を手に踊る場面の音楽です。
ドヴォルザーク
『スラヴ舞曲集』より
op. 72-2、op. 46-1
チェコの作曲家、アントニン・ドヴォルザーク(1841〜1904)は、ブラームスから才能を見出され支援を受けたことが知られています。「スラヴ舞曲集」第1集は、ブラームスに紹介された出版社から、当時流行していたハンガリー舞曲集のような作品を書いて欲しいといわれ、1878年に作曲されました。すぐに人気を博したため続編が望まれるも、なかなか着手できずにいたドヴォルザークでしたが、1886年6月、突然着想を得て、わずか1ヶ月で第2集Op.72を書き上げました。
いずれも最初はピアノ連弾作品として書かれたのち、管弦楽版に編曲されました。本日は、それぞれ8曲からなる曲集のうち、op.72-2とop.46-1が演奏されます。
バーンスタイン
『ウェストサイド物語』より
シンフォニック・ダンス
アメリカで生まれ育った初の大指揮者として、また作曲家としてもその名を残した、レナード・バーンスタイン(1918〜1990)。交響曲や宗教作品も多く書きましたが、初期はミュージカル曲で高い評価を得ました。代表作「ウエストサイド物語」は1957年の作で、シェイクスピア「ロミオとジュリエット」の20世紀アメリカ版といえるストーリー。ニューヨークを舞台に、ポーランド系のジェット団とプエルトリコ系のシャーク団という少年非行グループの抗争、元ジェット団のトニーと、シャーク団リーダーの妹マリアの悲恋が描かれます。ブロードウェイ・ミュージカルでの初演から高く評価され、ロングラン公演を経て映画化されました。
「シンフォニック・ダンス」は、ミュージカルのダンスナンバー等を集めて 1960年に完成された演奏会用組曲。「プロローグ」「サムウェア」「スケルツォ」「マンボ」「チャチャ」「出会いの場面」「クール〜フーガ」「ランブル」「フィナーレ」からなり、全曲続けて演奏されます。トニーが撃たれ、マリアと最後の言葉を交わし、息絶えて運ばれてゆくフィナーレで幕を閉じます。